3.17 Fri ROADSHOW

INTRODUCTION

ファッション業界に圧倒的な影響力を持つレジェンド
アフリカ系アメリカ人初のVOGUEクリエイティブ・ディレクター
《アンドレ・レオン・タリー》
昨年他界した彼の繊細で奇抜、そしてエレガントな生涯を描く

昨年他界した、ファッション界の巨匠と呼ばれたアンドレ・レオン・タリー。人種差別が色濃く残る時代のアメリカ南部で幼少期を過ごしたアフリカ系アメリカ人の彼が、如何に最も影響力のあるファッションキュレーターにまでのし上がったのか。彼の人生と彼が残した数々の功績をマーク・ジェイコブス、アナ・ウィンター、トム・フォード、イヴ・サンローラン、カール・ラガーフェルド、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ、ウーピー・ゴールドバーグ、イザベラ・ロッセリーニ、ウィル・アイ・アム(ブラック・アイド・ピーズ)ほか、ファッション界のみならず多数の豪華な関係者たちのインタビューと共にファッションの歴史を交え振り返るー

長年にわたり、ファッション業界に欠かせない存在であり続けるアンドレ・レオン・タリー。そのキャリアはあまりに長く、彼がオシャレの定義ではない時代を想像するのが難しいほどだ。ケイト・ノヴァック監督による本作は、ジム・クロウ法の影響下にあったアメリカ南部で幼少期を過ごしたアンドレが、現代において最も影響力のあるテイストメーカーおよびファッションキュレーターの一人になるまでを感動的に描き、ファッションに関する作品であるだけでなく、アメリカにおける一人のアフリカ系アメリカ人の経験も映し出している。

「祖母に教わったのは尊厳と価値基準――、一流を目指すこと。
厳格さ 自制心 維持整備“きれい好きは美徳”。
まさに貴族の生き方。貴族になるのに家系は関係ない。」
― アンドレ・レオン・タリー

本作は、アンドレの愛する祖母が教えた品格や黒人教会での若かりし日々が、後にWWD紙やW誌、VOGUE誌などで成し遂げる型破りな業績に与えた興味深い影響を初めてひも解いていく。ファッション史上最も華やかな瞬間を伝える貴重な記録映像に、自身の人生とキャリアを振り返るアンドレの赤裸々な言葉を織り込み、20世紀のアメリカ文化における最もユニークな人物の一人であるアンドレへの記念碑的作品である。『メットガラドレスをまとった美術館』のチームが手掛け、アナ・ウィンター、マーク・ジェイコブス、トム・フォードなど、ファッション界の著名人がインタビューに答えた『アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者』は、制作が相次ぐファッション・ドキュメンタリー映画の中でも見るべき一作に加わったと言えるだろう。
美しい映像と高度なリサーチによって紡ぎ出された本作では、人々が記憶するタープに包まれてる大きな体の派手なアンドレとは対照的なその内面、彼の心と魂と人生を知る事になる。

「彼にとってヴォーグで働き、ファッションショーのフロントロウに
座ること自体がアフリカ系の人々への重要なメッセージでした。」
― アナ・ウィンター —

ABOUT ANDRÉ LEON TALLEY

アンドレ・レオン・タリー

〈格好良い〉とは。スタイルと美学の定義を構築したファッション界の巨人。
1948年に生まれたアンドレ・レオン・タリーは《ジム・クロウ法(1870年代〜1960年代に存在した人種差別的内容を含むアメリカ合衆国南部諸州の州法)》の影響下にある時代にアメリカ南部で幼少期を過ごした。1983年より[VOGUE]のニュースディレクターを担当、1988年にはアフリカ系アメリカ人として初めてクリエイティブ・ディレクターに昇格した。1998年にエディター・アット・ラージに就任し、アナ・ウィンターの右腕として活躍。〈格好良い〉とは何か、独自の美学とスタイルを極めていく。また、名物エディターとしてだけでなく、『プラダを着た悪魔』でスタンリー・トゥッチ演じるナイジェルのモデルとされ、自伝の出版やセレブのスタイリスト、映画出演など、その活躍は多岐にわたる。白人の占める割合の多いファッション業界において、黒人モデルや非白人デザイナーたちの進出に積極的に貢献した。
2022年1月18日逝去。享年73歳。彼の死に際してはミシェル・オバマをはじめ、ビヨンセ、ゼンデイヤ、マライア・キャリーなど各界の著名人が弔意を表した。また、2023年のNFLハーフタイムショーではリアーナが赤いケープを着て彼をトリビュートした。

「立ち上がって叫ぶ必要はありません。
“黒人の誇り”を実践すればそれは認知され、社会を変えます。」
― アンドレ・レオン・タリー —

STAFF

Kate Novack

ケイト・ノヴァック(監督/製作)

映画製作をする前はタイム誌の記者として、映画、デザイン、テレビ、アートを担当していた。また、ファッションとデザインに特化したタイム誌の派生雑誌、タイムスタイル&デザイン誌の編集部員としても働いていた。初めて長編の脚本を務めた『Raker(原題)』はインディペンデント・フィルムメーカー・プロジェクトの新人作家プログラムに選出された。その後、彼女が製作と脚本を務め、2011年のサンダンス映画祭でプレミア上映された『Page One: Inside The New York Times(原題)』はCNNやローリング・ストーン誌に絶賛され、同年最高の興行収入を記録したドキュメンタリー映画の一作となり、エミー賞のニュース&ドキュメンタリー部門と放送映画批評家協会賞にノミネートされた。2014年、CNN制作の『学歴の値段 ~集金マシーン化した米大学の真実~』(アンドリュー・ロッシ共同製作)は、サンダンス映画祭でプレミア上映されインディワイヤーでその年の優秀ドキュメンタリー映画に選出。メトロポリタン美術館の衣装研究所と毎年開催されるメットガラの舞台裏を追った『メットガラ ドレスをまとった美術館』(2016年)は、トライベッカ映画祭でオープニングナイト作品として上映された。
彼女はニューヨークのブルックリンで夫のアンドリュー・ロッシと2人の子供と暮らしている。

Andrew Rossi

アンドリュー・ロッシ(製作)

エミー賞にノミネートされた経験を持つドキュメンタリー映画の監督兼製作者。ニューヨークを拠点とする自身の制作会社、アブストラクト・プロダクションズで映画やテレビ番組向けのコンテンツを制作。代表作は、高等教育が抱える課題を描いた『学歴の値段 ~集金マシーン化した米大学の真実~』(2014年/エミー賞ビジネス&金融報道部門ノミネート/インディワイヤー2014年優秀ドキュメンタリー映画選出/サンダンス映画祭プレミア上映)、メトロポリタン美術館の衣装研究所を追った『メットガラ ドレスをまとった美術館』(2016年/トライベッカ映画祭オープニングナイト作品)など。ニューヨーク・タイムズ紙のメディアデスクの内情を描きエミー賞を受賞した『Page One: Inside The New York Times(原題)』(サンダンス映画祭コンペティション部門プレミア上映)は、2011年公開のドキュメンタリー映画で最高の興行収入を記録した一作となった。また、エリン・リー・カー監督と、法執行機関によるオンライン活動の取り締まりの試みを追った『Thought Crimes: The Case of the Cannibal Cop(原題)』(2014年)やディー・ディー・ブランチャードの衝撃的な殺人事件を追った『Mommy Dead and Dearest(原題)』(2017年)など実際にあった犯罪ドキュメンタリー作品を複数製作しHBOに提供。最近ではソニーと共同でネットフリックスのオリジナルシリーズの製作総指揮を務めている。

CAST

TRAILER

COMMENT

  • 品格、知性、信仰心、審美眼、好きなものや人への愛情を培い、それらを失うことなく自身のスタイルに昇華したアンドレ。その姿から服を着ること、記述すること、語ることもクリエイティヴなんだと改めて教えられた。

    青野賢一

    (文筆家/選曲家)

  • 学校では習わない『大切な教え』が、この映画にはたくさん詰まっている。
    その人らしく、何かを追求していく姿は本当に美しい。

    オダギリジョー

    (俳優)

  • アンドレが圧倒的な美意識と感性に裏付けられた豊富な知識と優しさの方と知りました。彼を通したFashionがドラマチックな表現で世界中へと広がっていく記録に勇気と愛をもらいました。この映画を観てすぐにデザインをしたくなりました。

    落合宏理

    (FACETASM デザイナー)

  • 冒頭の「ファッションと違いスタイルは不滅。美は多種多様であらゆる物事に宿る。」という言葉に全てが凝縮されていると思う。アンドレ・レオン・タリーさんの貴重な生の声からファッションとの向き合い方のヒントを見つけ出せると思います。

    小木“POGGY”基史

    (ファッション・キュレーター)

  • 差別や偏見に屈する事なく、ファッション界の巨匠と呼ばれるまでに至った道のりは、後に続く者たちに希望を与え続ける。センスと知性と優しさ、そしてユーモア溢れる愛すべき人物の記録。

    下田法晴

    (SILENT POETS)

  • 1989年初夏、パリのカフェ ド フロール。
    黄色いギンガムチェックのジャケットにタイ、そしてカンカン帽をかぶったアンドレ・レオン・タリーと出会った。
    その瞬間、僕は彼の存在感に圧倒された。

    祐真朋樹

    (ファッションエディター)

  • アンドレを語る証言者たちの目の輝き!それを見れば、アンドレの素晴らしさが分かる!!何てチャーミング!何てキュート!何てエレガント!何てクール!スクリーンから目が離せない!「やっぱりファッションって最高だぜっ!ファッションこそ人生だっ!!」って心の底から叫びたくなる映画だった!

    竹中直人

    (俳優/映画監督)

  • ファッションを生業にするということ。それは他者への愛と敬意。自身を律して苦しい時も陽気に振舞うハートの強さ。努力を怠ったり、混沌とした感情の沼に陥りそうになったら、この映画を見返して襟を正そうと思う。

    谷崎彩

    (スタイリスト/洋服店店主)

  • 人種差別、富の格差、性的指向や外見への偏見。そんなこんなの息苦しいハンデを跳ね返し、趣味の裁定者として一目おかれたスタイルアイコンにして黒人文化のレジェンド、アンドレ・レオン・タリー。「かっこよさ」とは、世界に新しい視点をもたらし、よりよい社会を創造する可能性を広げること、と教えてくれる。

    中野香織

    (服飾史家)

  • アンドレの姿を、パリコレの最前列でよく見かけた。黒人の大男、際立っておしゃれ。ともかく目立った。その独自の美学の源泉に、監督はぐんぐん迫っていく。エレガンス、贅沢、エクストラバガンス、そして知性。そんなファッションの真髄が、日本ではいつになったら理解されるのだろう?

    深井晃子

    (キュレーター/服飾研究家)

  • ショーの最前列で圧倒的な存在感を放ってきたアンドレ・レオン・タリー。日本にいると見えない、彼の生い立ちや活動が明らかに。南部の黒人社会で育ち、祖母やヴリーランドから愛情を注がれた彼の「贅沢とは心の在り方」という言葉とその実践が心に響く。

    本橋弥生

    (デザイン史研究家/「ファッション イン ジャパン」キュレーター)

  • 彼はファッションが恋人で、ずっとファッションを愛し続け、結果的に世の中を変えていったんですね。
    愛に勝るものはないと言いますが周りの人への愛や尊敬は忘れないようにしましょう。

    三原康裕

    (シューズデザイナー)

  • 「貴族になるのに血筋は関係ない」彼自身の言葉ほど、アンドレ・レオン・タリーを表しているものがあるだろうか。このドキュメンタリーで知った彼の美とファッションへのストイックなまで献身と、反骨精神。ファッションの最高位に登りつめた彼に改めて敬礼したい気持ちだ。

    山崎まどか

    (コラムニスト)

  • コロナ禍を経てさまざまな社会問題が噴出し、不安な世の中に生きるなか、アンドレ・レオン・タリーのような確固たる「自分のスタイル」を持つことこそ、どことなく萎縮した私達を解放し、新たな時代を切り拓くチャンスになるのではないか。彼、そして彼を愛する人々が発信した言葉の数々から、それを感じ取ってもらいたい。

    よしひろまさみち

    (映画ライター)

【五十音順/敬称略】